C O L O R  ×  G A M E
私と静雄が会うのは、いつも、時計の短い針がてっぺんを差す頃
それもウキウキをウォッチングするほうじゃなくて、今日と明日の端境の時刻のほうだ

無機質なカウンターを挟んだ向こうとこちら側で、寡黙な静雄を見ながら私はグラスを磨いていたりする
静雄の仕事の性質上、夜は忙しいような気もするのだが、“24時間取り立ててる訳にもいかないっしょ”
とトムさんが一応の時間的区切りを設けてくれて、何もない日にはこの時刻に業務終了となるのだ。

いつも気だるげにやって来る静雄は、この場所で少し飲んで、働く私をぼんやり観察し
そうして、まだ夜も明けきらぬ頃、取り散らかった部屋で波のように幾度も私を抱くのが習慣で

出勤時間が来たら、疲れ果てて泥のように眠る私を残しさっさと部屋を出て行ってしまう。

もういい大人だし、それなりの恋愛スキルも培っているから、別段不満はないけれど
いつも私たちを取り巻く色が、ベッドサイドのシェードが放つ淫靡なピンクとそこ以外の漆黒
それから闇にぼんやりと浮かぶ、自動販売機の白や濃灰の空ばかりなのが、少しばかり残念で。


「、何やってんだ」
「たくさんね、色を感じてみようかと思って」

カンパリ、ミモザ、ギムレット、ブルームーン、たくさんのカクテルグラスを静雄の前に並べ
ゆっくりと唇の片端を上げると、呆れたような声ともため息ともつかぬような音を吐いて
サングラスの奥から、まるで恐ろしく不味い液体を差し出されたかのような眼差しを寄越した

「飲まねえぞ、こんな甘ったるいもん」
「いいじゃない、たまに飲むと美味しいかもよ」
「いや、さんざ作ってたしな、ステアしてる時点でもうキレそうだった」

「じゃあ、これ出したらカウンターをもぎ取っちゃうかなあ」

そう言いながら差し出したショートグラスには、なみなみと注がれたペパーミントグリーンの液体

「何で、グラスホッパー」
「ふふ、静雄の躍動感あふれる喧嘩姿が、ちょっと重なったり」
「誰がバッタだ、あぁ」

本当は昼過ぎに目覚め、食欲もないし、恐ろしく手持無沙汰だったから
たまには日光にでも当たろうかと近くの公園に散歩に行ったときに、偶然仕事中の静雄を見かけ
こっそりその仕事ぶりを眺めていたら、目の前の色鮮やかな新緑と静雄のすらりと綺麗な背中が重なり

―――最高に愛おしくなった

なんてことは、どこに身を置いていいか分からないほど恥ずかしいから、口が裂けても言えないけど。


「今夜は客が少ねえな」
「雨だしね、早めにクローズしようかな」
「そうしろ、早めに部屋に戻って、俺らもしっぽりしようや」

「で、明日晴れたら、公園で昼飯でも食うか」

頭の後ろで腕を組み、そう言って私を見つめる静雄の眼差しがサングラスの奥で揶揄するような光を放った。

「もしかして、知ってた」
「ボーっとした顔してベンチに座ってんじゃねえよ、周りの奴らにガン見されてたぞ」
「え、そんなに変なヒトに映ってた、私」
「いや、嗚呼、クソ、ナンパされたらすっ飛んで行って男を血祭りに上げようと思ってた」


思わず噴き出した私をじろりと睨めつけて、静雄は目の前のグラスを次々に呷った

「やっぱ、甘ぇ、このグラスホッパー、ふざけてんのか」

クリームが多過ぎる、とか何とか、ぼやく静雄を見つめ柔らかく唇の片端を上げた
ピンクのライトの下でたくさん愛を交感したらたっぷり眠って、そうして数多の色が溢れる公園で会おう
鮮やかなグリーンの芝に目線を落とし、ぴょんと跳ねるバッタを追って、ものすごく莫迦らしく

そしてものすごく有意義に、大好きなヒトを愛でることだけに没頭するから、ね。


COLOR × GAME さまへ / 銀河 (10/06/16) ◆ material / Helium さま