|
――よく他人と衝突する人っていうのは、内気な場合が多いんだよ。 臨也さんから言われた一番初めの言葉は私の性格をストレートに突いて出たものだった。珍しくバイクに跨らないセルティと団欒としながら池袋を歩いている最中私が臨也さんに思いっきりぶつかってしまったからだ。 初めは意味が分からず臨也さんが怒っていると認識し、ただ謝り通す私だったけれど、隣のセルティがPDAで『そんなに謝らなくて平気な相手だから』と教えてくれたので、私は初めて彼の顔を見た。 酷く美しく整った顔だったもので、自分が醜く思えてしまい俯いたのを今でも覚えている。 「ほら、また俯いてるよ」 ぼーっと床の書類を眺めながら過去のことを考えていたら、目の前から臨也さんがそう私に呼びかけていた。 顔を上げた私の前にはコーヒーの入った湯気の立つマグカップを持って此方に独特な笑顔を向けた臨也さん。私はそんな笑顔にどう返していいのか分からず、とりあえず謝罪の言葉に笑顔を添えて返事をした。 「何で謝るのさ。…中々直らないね、その癖」 「昔からなんです」 「セルティも中々困ってるみたいだし」 「…セルティは…優しいから…」 「あれ、今の様子だと俺が優しくないみたいじゃない?」 「そんなことはないですけど!」 セルティとも衝突から始まった仲だった。川越街道に位置するマンションに住まう私と、最上階に住む新羅さんとセルティ。バイクから降りて帰宅しようとするセルティと急いで出掛けようとした私が衝突して打ちどころの悪かった私を優しいセルティが介抱してくれたという訳だ。 そんなことから知り合いの顔が広まる私は、セルティが女性であり人間でないこと位しか知らない。無論目の前で笑みを浮かべる臨也さんが何をしているのか、この部屋中に積み上げられた書類が何のためのものなのかも知らない。知りたいとも思わなかった。 「人間っていうのは面白いよね。みたいに内気なのもいれば俺みたいなのも居るんだ。十人十色なんていう諺があるけど、俺はいい言葉だと思う」 「…新羅さんも言ってました」 「うげ」 臨也さんがするりと失礼なことを言ったので自然と笑みが零れた。静雄さんと臨也さん、新羅さんが同級生だなんてなんて騒がしい高校生活だったのだろう。それを思うと私の高校生活は如何に充実しているかが分かる。 「何で笑うの?」臨也さんが純粋に此方を向いて問いかけてきたのを少し考えてから「臨也さんのことが好きだからです」と答えた。 「…じゃあさ、は紀田正臣くんとかのことどう思ってるの?」 「?…好きです、けど…」 「ふうん。そうなんだ」 問いの意図が読み取れず、私は首を傾げた。彼の質問の意図を問う前に、臨也さんが私の傍にあった封筒を指差して「取ってくれる?」と言ったので封筒を彼に手渡した。その際に見えた時計は私が臨也さんの家に居座ってから2時間以上だということを知らせてくれたので、私は「あの…そろそろ」と話を切り出す。 「帰るの?」 「臨也さんも忙しいでしょうから」 「の気の使いどころは考えものだねえ。泊って行けば?波江の荷物で何とか賄えるでしょ」 「波江さんにもご迷惑お掛けすることになっちゃいますし…今日のところは帰ります」 そういえば、波江さんは今どうしているのだろう。そんなことが頭の隅で疑問として生まれたものの、臨也さんに聞くのは気が引けたので特に質問しようとはしなかった。 軽い荷物を持って、最後に臨也さんの飲み干したコーヒーを新しく淹れなおして彼の机に置くと、私は玄関に向かう。珍しく臨也さんも玄関までやってきて、自ら扉を開けてくれた。 「寂しくなったらいつでもおいで」 「波江さんにも宜しく伝えて下さい。それじゃあ」 最後に臨也さんの笑顔を見た後で、私の頬が冷たい風を撫ぜた。
「よくもまあ2時間も密室で仕事させてくれるわよね」 「ああ、お疲れ様。コーヒー飲む?」 隣の部屋から出てきた波江が不機嫌そうな声を上げて書類を俺の机に置いた。2時間という時間の中でよくもまあこんなに効率よく仕事ができたものだ、と俺は彼女に感心する。俺に至っては会話の間に仕事を大雑把にこなしていただけであり、波江の10分の1程度しか終わっていない。 「飲む。…って言ってもちゃんの淹れたのは飲ませてくれなさそうだけど」 「その通りだね。自分で淹れて」 「分かってるわよ」 自分でコーヒーを入れてきた波江に向かって「の淹れてくれたコーヒー、美味しいよ」と嫌味を投げかけてやる。すると今回の件については俺の予想以上にご立腹な波江が珍しく嫌味に対して嫌味で返してきた。 「本人の前でも""って呼んであげなさいよ」 「考えておくよ。にしても、波江と違っては純粋だよねえ」 率直な感想は嫌味として波江に返される。そして、それ以上の嫌味は飛び交わなかった。 |
COLOR × GAME さま に提出させて頂きました
Thanks!!
project //
COLOR × GAME さま
back img //
FOOL LOVERS さま
img //
はだし さま
(100319 // 4989 //
ZERO)