| C O L O R × G A M E |
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毎月の日課、銀行に行ってATMに指定されたとおりの金額の入金を確認して、 当座の生活費の確保をきちんと頭の中で計算して、必要分だけを降ろす。 それから別の通帳を取り出して、今月のアルバイト代の入金を確認して、 そちらは全額引き落とし、銀行の味気も何もないけれど時々、可愛いなと思うようなデザインの袋に入れる。 これで今日の用事はお終いか。 そう言えば、お風呂の入浴剤が切れてたっけ、あとは…などと頭の中で計算しながら歩く。 指折り数え、しなければならないこと、やらなければいけないことを頭の中で繰り返しシュミレーションしてから、 今月は少し余裕があるかな?とか、以前から欲しかった雑貨を少しだけ奮発して買ってしまおうか、など。 そんなことを考えているから、気づかなかった。 背後から近寄る人物が居た、なんてことに。 「ーっ、なぁにやってんの?」 「ひゃっ!?」 するり、と伸びてきた腕に後ろから抱きすくめられ、驚いたような素っ頓狂な声を上げ、 大きく身体を震わせ振り向けば、そこには見知った顔が悪戯が成功したような喜び顔で自分を見下ろしている。 しまった、と胸中で毒づくが気づかれてしまった上にうんな声を聞かれてしまったのだ、誤魔化しようもない、と思う。 やってきた本人も、それを分かっているのか、得意げな満面の笑みでいる。 ああ、それが腹立たしい。 「なになになーに、そんなにあっつい視線を俺に向けてくれちゃって。 あれですか? ちゃんてばそぉんなに俺がここに居ることが不可思議かつまか不思議でしょうがないのかなぁ?」 「いや別にその辺りは不思議じゃないからいいんですけれど……」 だめだ、ペースが崩されないように平静を保たなければ。 でなければますますこの相手は調子に乗る。絶対にそれだけは屈してはいけない。 そう言い聞かせながら、名前を呼ばれた少女、は擦り抜けるように自由になった手だけで 相手の、紀田正臣のその手をぞんざいにならないように払いのける。 「この手、は間違いだと思うんですけど」 「間違いって…間違ってないと俺は思うけどねぇ。 ほら、俺ってば女の子とのスキンシップを大事にするからさ、にも当然スキンシップするわけだ。 しかもには特別特注オートクチュールなぐらいのスキンシップで接しないといけないだろ?」 「いえ全然」 「またまたまた、そんなこと言っちゃうと俺のハートはブロークン。 けれどそんなのツンとデレに俺の胸はとこめきはーと」 「いや、だからどうしてそんな訳の分からない単語を並べられるのかがわたしには不思議で仕方ないんですけど…」 もう何を言ってもこの抱きついた体勢は変わらないのか、ならば仕方がないか、とさえ思う。 むしろ何かと難癖をつけて引き剥がそうとするほうが、彼にとってのツンとデレになってしまうのではなかろうか、 と、さえ思うわけで……、はぁ、とは小さくため息を吐き出す。 「なになになにー、その溜息。 それはあれですか、俺が相も変わらずさんに対してこんなベストフレンド以上ベストパートナー未満な態度だからか? だがな、男はまだまだ子供なんだ、子供である俺は更に子供だ、つまるところ色んな女の子と接したいわけだ」 「何も言ってないんですけど……。 それより、紀田くんはどうしてここにいるんですか? お家、正反対でしょう?」 「ん? ああ、そっちか。 別に、特に意味はないんだけどさ……今日は月初めだし、が銀行行くんじゃねぇかなーと思って」 「………」 ああ、そう言うことか。とは思う。 彼は自分の置かれている境遇を知っているからこうして気遣ってこっそりついてきたのか、と納得する。 本当に、そうならそうともっと早めに声をかけてくれればいいのに、とも思うことを忘れずに。 「紀田くん」 「んー?」 「とりあえず、歩きたいのでこの抱きつく体勢から解放していただけませんか」 「え゛、なんで!? つか、、そんなに俺に抱きしめられんの嫌なわけ!? 別にお前の身体触ってラッキーとか思うけど、 今のところはまだ思うに留めてるだろ!?」 「一生、留めておいてください……!!! そうじゃなくて、家に帰るんです。紀田くん、今日のお夕飯も適当に済ませそうなので、 お気遣いいただいたお礼、をしたく……?」 言いかけて、そこで言葉を止める。 ぎゅっと自分を抱きしめ見下ろしていた正臣の視線が、いつの間にか空に向けられていることに気づいたからだ。 どうしたのだろう?と、首をかしげながら同じように正臣の視線を追いかける。 追いかけて、彼の視線が、ビルの群れの隙間から覗く地平線に沈み行く夕日と、 その上から朱色を覆い隠すように現れた藍色のグラデーションを見つける。 「紫色だ」 「……そう、ですね」 そう、答えれば正臣の腕がするりと解かれ、自然に当たり前のように、の少し小さな手のひらを握り締める。 何か文句を言ったほうがいいのだろうか、いや、けれど、これはこれで別にこのままでもいいのかもしれない、と思う。 たまには、ほんの少しだけ、本当に少しだけ。 こんな風に手をつなぐことも、悪くないのかもしれない、そう思って。 そして、気がつく。 繋ぎあった手に重なるようにその紫色のグラデーション。 それは、まるで。 てのひらにアメシスト 薄紫の水晶のようにキラキラと / 20100414 |
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